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染めない生活

50代で毛染めを止めました。

佐伯さんの服が好きだったけど

佐伯さんというのは、村上春樹の「海辺のカフカ」(新潮文庫)に出てくる50歳過ぎの女性のことです。

この本を読んだとき、佐伯さんのような服を着たいと思いました。

佐伯さんは高松市にある小さな私立図書館の館長さんです。

痩せていて姿勢がよく、長い髪は後ろで軽く束ねています。上品で知的。

彼女はこんな服を着ている

・ネイビーブルーの半袖のワンピース。銀の細いネックレスと、黒い革の腕時計。

・艶のある淡いグリーンのブラウスに、ベージュのタイトなスカート。細い銀のネック レス。

・ピン・ストライプの綿のシャツに、薄い生地のブルージーンズ。白いデッキシューズ。

・黒いTシャツに、カフェオレのような色のシャツを羽織る。小さな真珠のピアス。

 

こう書くと別になんてことのない服装です。

服のところだけを抜き出して書いても、その魅力は伝わらないですね。

村上春樹の魅力

話は少しそれますが、村上春樹の本を読んでいると、それほど詳しい描写があるわけではないのに、自分の頭の中で膨らませてしまうことがあります。

他の村上作品で、黄色いイチョウの葉が一面に積もっている光景を書いたところがありました。

ところが後で確認すると実際の文章はたった二行。しかもごく普通の表現で、とくに凝ったものでもなんでもなかったのです。

多分、読みながら勝手にすごいイメージを作り出して、それを記憶してたのだろうと思います。

佐伯さんの服も、それに似た感じかもしれません。

すごく上品で素敵なファッションを頭の中で作り上げていたようです。

 

私にとって村上春樹が特別なのは、こんなふうに小説の一部分(小さなエピソードや登場人物の服、料理などの描写)がいつまでも頭に残るからです。

それが自分で勝手に作りあげたものであっても、何年も残っているなんてことは他の小説家の書いたものではないんですよね。

50代女性にはシンプルすぎ?

改めて佐伯さんの服を考えると、50過ぎの女性には少しさびしいのではないかと思いました。

こういう上質だけれどシンプルなファッションが似合うのは若いうち、せいぜい40代までではないでしょうか。

佐伯さんはアクセサリーもほとんどつけず、化粧気もあまりない女性として書かれています。

肌のハリも失われ髪の艶もなくなる50代には、もう少し華やかな色があった方がいいように思います(自分のことは棚に上げて書いています)。

以前に読んだときはそんな感じは受けなかったので、今は自分が50を超したせいでそう思うのかもしれません。

 

ただ、佐伯さんはずっと昔に心が死んでしまった女性として書かれていますので、これでいいのかもしれません。

そこまで考えてこういう服を着せたのならすごいですよね。