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染めない生活

50代で毛染めを止めました。

ヘンリー・ダーガー 生涯にわたって物語を紡いだ人

50代からの暮らし

60年間にわたって、誰に見せるつもりもない長大な物語を書き続けた人がいます。

ヘンリー・ダーガー(1892~1973)です。

1万5千ページを超える壮大な物語と、その挿絵として描かれた300点あまりのドローイングが彼の死後、アパートの家主によって発見されました。

ダーガーの生涯

アメリカのシカゴ生まれのヘンリー・ダーガーは幼くして家族を失ったため8歳で児童施設に入所し、後に知的障害児の施設で生活します。

17歳でその施設を脱走、病院清掃員などとして働きました。

他人とは天気の話くらいしかしない孤独な生活でした。

物語の創作は9歳から始められ、死の直前まで約60年間続けられました。

創作技法

まともな美術教育を受けていなかったダーガーはどうやって数百点ものドローイングを描いたのでしょうか。

彼のアパートには大量の古雑誌や古新聞が残されており、こうした印刷物から写真や漫画をトレースし、コラージュして挿絵を作っていったようです。

物語の概要

物語のタイトルは「非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子ども奴隷の反乱に起因するグランデコ‐アンジェリニアン戦争の嵐の物語」。

長すぎるせいか、通常は「非現実の王国で」と略されているようです。

子どもを奴隷として虐待する国「グランデリニア」と、慈愛に満ちたキリスト教国「アビエニア」との戦争を、「ヴィヴィアン・ガールズ」と呼ばれる7人の少女たちの活躍を軸に語られます。

さらに描かれた美少女たちは多くが男性器をつけており、ダーガー自身が女性とのかかわりがなかったためであると考えられています。

少女たちが首を絞められたり、体を切り裂かれたりと残酷な場面も多いことから、「性交渉の代理」ととる見かたもあります。

 

ダーガーの作品は、正規の教育を受けていない人々の芸術「アウトサイダー・アート」の代表として世界的に高い評価を受けました。

ただ、最晩年に老人ホームに入ったダーガーは、作品を発見した家主に対して「捨ててくれ」と言ったと伝えられています。

誰に見せるつもりもなく書き続けた物語を他人が見ることをダーガーがどう思っていたのか、わかりません。

人が60年もかけて物語を作り続けたという事実に驚嘆すると同時に、人の心の中を勝手に覗き込んでいるのではないかという居心地の悪さも感じます。

 

物語の中にはダーガー自身も子どもの守護者として登場していたそうです。

実際の生涯は孤独で変化のない日々だったかもしれませんが、頭の中では冒険や愛や戦いに満ちた、充実した生涯だったと信じたいです。