染めない生活

52歳で毛染めを止めました。

津村記久子の魅力


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津村記久子の小説に出てくる人は、ごく普通の働く人が多いのですが、最近読んだ「ウエストウイング」でもそうです。

 

ストーリー 

 

設計事務所の支所で働く31歳の女性ネゴロ、土質や水質を分析する会社に勤める28歳の男性フカボリ、小学5年生のヒロシは、椿ビルディングで働いたり塾に通ったりしています。

廊下のスチール本棚で隠された一角でそれぞれが休憩するうち、物を借りたり貸したりとかかわりを持つようになります。

 

こう書いてしまうと何もない日常を書いただけのようですが、結構、いろんな事件が起こります。

女子トイレで赤ちゃん産む人がいたり、豪雨のためビルからターミナルへ行く地下道が水没したり、屋上の貯水槽に入り込んだ菌が排水管からビル内に漏れて何人かが隔離される騒動も起こります。

 

椿ビルディングが取り壊しになるかもしれないというのに、オーナーはお遍路に行っていて連絡が取れないという、なんやねんそれは的な状況にあったりもします。

 

リアルな大阪弁

 

若い頃、田辺聖子の小説を好んで読んでいました。

田辺小説も大阪弁でしたが、実際に話されている言葉よりきれいに整えられていたように感じます。

津村記久子の書く大阪弁はもっとリアル。

 

「ほんっとにさあ、あの子なんなん? 後ろで二人待ってんのに、だらだら電話用のメモのコピーとってさ。ちょっと見たら、明らかに私用のもとってたよ、なんか、居酒屋の地図みたいな。もうさー、もう、あのしゃべり方ゆっくりなんがすっごいむかつくっ。」

 

これはネゴロと同じ会社の柳澤さんという女性の営業が、まったく仕事しないりさちゃんという後輩のことを罵っているセリフ。声が聞こえてきそうです。

 

嫌な人物もリアル

 

さらには嫌な奴の書き方も秀逸。

ネゴロの職場に視察の名目で週に二度訪れる杉本次長は、登場回数はそれほど多くないのに、嫌な感じが印象深いオッサンです。

 

礼儀にやかましく、意味もなく職場をうろうろし、下の人間のやっていることをうだうだと引っ掻き回すのが好きで、おまけに口が臭い。

ネゴロに対しても、入れるお茶が熱いとか、よく席を離れるとか文句を言います。

経営者の親族なので、仕事ができるかできないかについてはあまり問われていない、というところを読んだとき、自分自身が働いていた頃のアノ人やコノ人を思い出してしまいました。

 

読んでいるときは至福

 

津村記久子の本は文庫本で見かけたときは買うことにしています(単行本は高いのと収納場所を取るので買いません)。

中学生が主人公の小説など、この作者でなければ読まないだろうというものでも買います。

最近読んだのは「エブリシング・フロウズ」で、「ウエストウイング」に出ていたヒロシが中学三年になった時の話です。

 

そして、中学生に感情移入はしないだろうと思っていたはずが、読み終わっても彼らの余韻が体のあちこちに残っている気がして、しっかりと世界に浸っていたことに気がつきます。