染めない生活

52歳で毛染めを止めました。

一つ一つ片付けていく


スポンサーリンク

津村記久子の「ポースケ」(中央公論社)を読みました。

タイトルはてっきり登場人物のあだ名か何かかと思ったら、ノルウェーの復活祭のことだとか。

 

内容は、気楽な響きのあるタイトルとはちょっと雰囲気が違いました。

「ポストライムの舟」から5年後の物語という設定です。

前作にも出てきたヨシカが奈良で開いた「食事・喫茶 ハタナカ」が舞台になっています。

「ハタナカ」に集まるお客さん達それぞれを描いたお話になっています。

 

いろいろ大変な登場人物

 

登場人物はOLやピアノの先生、ハタナカで働くパートさんと、ごく普通の人々なのですが、それぞれに事情を抱え、それなりな日常を生きています。

 

会社の女の先輩に高い化粧品をすすめられたり、後輩に頻繁に顔や手のチェックをされたりする、肌の弱いのぞみ。

 

以前の勤め先を心に問題を抱えて止め、それ以来電車にも乗れなくなり、睡眠障害も持つ竹井さん。

 

ピアノの無料体験レッスンに来た子どもがネグレクトではないかと気が付く冬美先生。

 

ストーカー気味の元彼に悩むゆきえなど、嫌なことや悩みごとのない人生などないんだなあと思わされるような人ばかり。

 

前作の主人公だったナガセが、店のイベントでなぜか弾き語りをしたりします。

津村作品の登場人物は、こういうちょっと不思議というか、変なところが魅力です。

 

話が進むにつれて、それぞれの悩みにも明るい光が差してくるので読後感は暗くはないです。

 

「ハタナカ」の店主

 

そんな登場人物の中でも安定感のあるのが、「ハタナカ」を切り盛りしているヨシカです。

少々ビジネスライクな感じはありますが、いろんなお客や友人に近すぎず離れすぎず対応するところは、できる人という感じ。

以前勤めていた会社では営業成績で同期で1番になっていたヨシカですが、それゆえに社内で孤立もし、でもそういう人だからこそ店を軌道に乗せてやっていけるのだと納得できます。

 

そんなヨシカも、もう何年もテレビを見るくらいの娯楽にしか触れておらず、店が信用を得るまでは自分の欲望は二の次と、定休日以外は休みもせず、ずっと店のことばかり考えてきた、という記述を読むと、店を開くって大変なことだとため息が出そうになります。

 

「ハタナカ」のモデルになった店があるなら行ってみたいと思ったのですが、一つの店をモデルにしたというのではなさそう。

あとがきに奈良にあるカフェ3店の名前を挙げて取材のお礼が書かれていました。

 

本のオビにも引用されている、「人生には一喜一憂しかない。一つ一つ通過して、傷付いて、片付けていくしかないのだ」という言葉。

生きるって確かにそういうことですね。